今宿で野枝に学ぶ
写真・文:村社菜々子
きっかけは「風よあらしよ」
3月18日に、今宿の地を訪れました。明治期の、婦人解放運動家で知られている伊藤野枝の墓石を見に行くためです。
野枝に興味を持ったきっかけは、大学で催されたイベントです。昨年の10月頃に、作家の村山由佳さんの講演会がありました。課題本として扱われたものが『風よあらしよ』で、伊藤野枝についての話を伺いました。野枝の出身地が今宿であると聞き、いつか訪れてみたかったのです。

見つからなかった墓石
昨年の12月後半、友人らと叶岳を訪れました。インターネットで検索したところ、この山の中に、野枝の墓石があるとの情報を見ました。二時間ほど山の中を歩き回りましたが、見つかりませんでした。探すことを諦めて、カキ小屋でお昼ご飯を食べて帰りました。

野枝の墓石とついに対面
今回は、横川さん(九州大学法学部4年 今宿プロジェクトメンバー)にご紹介いただいた郷土史家の大内士郎さんのご協力により、墓石のある場所を案内していただけることになりました。聞くと、野枝の墓石は叶岳ではない、別のところにあるとのことでした。
その日は雨が降っていました。JR今宿駅から車で10分ほどのところに、ローソン今宿大塚店があります。そのすぐ隣に、曲がりくねった細い道があり、その道を進んでいきました。民家や畑を横目に、どんどん奥へと入っていきます。車の窓から見る景色は次第に緑が増え、道も狭くなっていきました。
たどり着いたのは、人気のない山奥でした。さらに奥へと進むと、そこには野枝の墓石がたたずんでいました。舗装された道から外れた、静かな場所にありました。山は赤土で覆われていたためか滑りやすく、靴は落ち葉だらけになりました。長垂海岸を見ることができる場所にあると聞いていましたが、周りは木が茂っていて、海を拝むことはできませんでした。

墓石の周りには古墳があり、大内さんによると400~500もの古墳が眠っているそうです。
イノシシを捕獲する罠も、どこかに埋まっているそうです。

女性の解放を、100年も前から主張していた野枝に対して、尊敬の念を抱きました。一方で、記念碑や看板といった目印になるものがないことに疑問を持ちました。そのためか、全国から訪ねてきても、見つけることができずに帰ってしまう人も多いそうです。
野枝の没後100周年という節目に、今宿を訪れて野枝に学ぶ機会に恵まれ、嬉しく思います。このご縁を大事に、筆者も少しずつ発信していこうと思います。
村社菜々子
2000年、宮崎県生まれ。西南学院大学法学部在学中。幼少期は小さな漁村で育ちました。福岡の田川を訪れたことをきっかけに地元の環境地域の魅力を活かしたまちづくりに関心があります
