学生と地域の出会い 〜人生の岐路で得られたものとは〜

学生と地域の出会い ~人生の岐路で得られたものとは~

文・写真:末本圭子

今宿プロジェクトメンバーとして活動してきた2人の大学生が今春卒業し、今宿での活動を離れます。今宿での活動をふりかえり、今、どんな思いをもっているのか、卒業を前に改めて話を聞きました。

石田匠さん

今宿田んぼアートの田植えに参加

石田匠さん(九州大学大学院航空宇宙工学専攻)は、九大の科学教室のメンバーたちとともに、今宿小学校で、「ブーメラン教室」「顕微鏡教室」を開催しました。また、上ノ原の山口喜久雄さんと一緒に天体観望会を2度開き、今宿の多くの子どもたちに科学への関心を広げるきっかけを作ってくれました。

服藤さん

FMラジオの収録(今宿プロジェクトが紹介されました)左端が服藤さん

服藤悠一郎さん(九州大学法学部4年)は、日本中の鉄道を完乗しようと旅を続ける鉄道オタク。交通政策にも関心があり、コミュニティバスなぎさ号の利用状況の聞き取り調査をしたり、今宿を巡るバスツアーの企画・運営に活躍してくれました。

ー服藤さん、今宿で活動するようになったきっかけと印象に残っていることは?

服藤 きっかけは、(運営が厳しい)コミュニティバスなぎさ号から始まりました。今宿を知るために地域の人と交流し、だんだん今宿に住む人たちに愛着を感じるようになりました。

 そもそも必要とされているバスなのかを確認したいと思いました。アンケートとって、インタビューして、その中で、「今宿に住み続けたい、そのためには移動する足が必要だ」という住民の声が伝わりました。なぎさ号に乗って利用者の声がを聞き、運行する姪浜タクシーの社長から今宿の生活の足であるなぎさ号を守りたいという思いを聞き、それぞれの思いがつながっていると感じました。

上ノ原で取材(中央が服藤さん) 姪浜タクシーの岩本社長を取材(左 服藤さん)

末本 他にも、バス旅、まち歩きの企画にも関わりましたね。

バス旅で長垂海岸へ 案内は大内士郎さん (2022年)
今宿上ノ原でまちあるき(2021年)

ー石田さんが今宿プロジェクトと関わるきっかけは?  

石田 iTOP (*)の仲間に誘われて関わるようになりました。気づいたら今宿に住むというかけがえのない経験をしました。
  
 (*)iTOPは、糸島市で地域と学生をつなぐまちづくりに取り組む学生団体

末本 石田さんの科学教室は大好評でしたね!

iTOPのメンバーと 右端が石田さん
ブーメラン作りに寄り添う石田さん
ブーメランの仕組みをわかりやすく説明して、デモンストレーションをする石田さん

ー糸島を含め、地域でいろんな人と会っているけど、今宿の印象は?

左 石田さん   右 服藤さん       今宿 横浜のウィンドファームにて

石田 科学教室を開催するきっかけを作ってくれた人との出会いは大きいです。「いいね、おもしろいね」と肯定から入る方で、生き生き生きる大人の理想像に見えました。

服藤 今宿では、自分のテーマを何かしら明確に持っている人に出会ったという印象です。たとえば田んぼアートなど、自分らしさを表現する場がある、自分のストーリーを持っていられる場がある、それが今宿なのかと思います。

末本 ふだん寡黙な地域の人が、大学生を前に饒舌に語るのが印象的でした。若い人に伝えたい気持ちが溢れていました。外からの人が関わる意味は、こういうことかと思いました。

ー活動を通して、何か感じていることは?

石田 大都市圏の大学に行っていたら、たぶん就活に全力を注いでいたと思います。企業で働く大人としか会わなかったかもしれません。周りにいる学生も、いい会社に入るためにどう動くか、そこに学生時代の時間を割いていたと思います。
 受験が終わって間もない10代の終わりに、今宿で自分らしさの軸をしっかりもち、哲学をもって生きている大人に出会ったことは、自分の進路選択に、影響を受けたと感じます。

末本 いろんな大人をみてきたことが、今の就職や生き方に少し影響したということ?

石田 服藤 かなりというか、完全に影響されました(きっぱり!)

今宿のまちあるきで上ノ原のお宅を訪問 ものづくりを楽しむ暮らしに触れる (左端 服藤さん)

服藤 人口減の中で地域活性を考える時、地域同士が人の取り合いをすることになります。今住んでいる人がそこに住みたいと思わなければ、人は流出していきます。今宿での活動に関わる中で、特定の地域でエネルギーを注ぎたいと思いました。それが自分の中で整理されて、学者の道ではなく、行政の道に進もうと思いました。それも政府ではなくて、自治体です。

末本 直接、人の存在を感じられるところ?

服藤 エンドユーザーが見えているだけでなく、土地に根ざしていることが自分にとって重要と気づきました。一人一人の個性と土地は不可分になっています。少々難しいことであっても、それを守りたいなと思いました。

末本 そんな目線で見ると、たとえば獅子舞を続けていることの豊かさがわかる気がします。そこに時間をかけることの豊かさ。
 
末本 土地に根ざして、地域で暮らしている人に、行政として関わりたい?

服藤 行政として励ます立場で関わりたいです。大学に入った頃、人に共感されなくても自分だけのテーマを作って、学者にならなければならないと思っていました。でも地域に関わり、いろいろな人に会って、共感できるものがあることはいいなと思えました。共感できることは幸せと気づきました。

服藤 学問として学ぶのは、因果関係のロジックの世界だけど、最後にくる生きる目的は、幸せになることだと先生に教えられました。「生きる目的を忘れないように」というのは、大事なアドバイスでした。

石田 進路の選択肢を提示するってすごい先生!専門を高めていくだけじゃない世界があること、合理性だけではないということを言ってくれたんだね。

赤米や黒米など植え分けて、秋には田んぼアートになる   貴重な体験に参加した石田さん

石田 いろいろな価値が混じり合う中で大学生活を過ごせました。今から必要とされる最新の航空技術を学べたことは魅力的でしたが、それと同時に技術の対極にあるもの、心を豊かにする術と接することができました。その両方の価値を知り、結果として地方で暮らしたいと思うきっかけを得られました。

末本 対極にあることを知ることができた、それで自分は研究職ではないなと思って、地方で暮らせる今の仕事を選んだのかな?

石田 その通りです。もともとは、飛行機を作りたい一心で大学に入りました。でも飛行機を作るよりも、自分の生活にフォーカスしていきたいと思うようになりました。

末本 でも志はまたどこかで生きてくるだろうし。

石田 絶対どこかで、関わり合うと思います。選んだのは空に関わる職業だし、友だちが作ったものを、自分はその技術を運用する立場で働きます。空への夢は全然捨ててないし、今も空への夢を追いかけまくってます。

末本 地域に関わったから何か得することがあるとか何もない中で、「なんかわからないけど おもしろそう」「力になれることがあるなら」と損得抜きで関わってきたのはすごいと思います!その分、得るものがあるといいなと願うけど、活動するそれぞれが気づいていくものなので、これが得られますよ、とは言えないなあ…。みんなは、それぞれの活動経験から、自分なりの意味を見つけていったんだね!

末本 どんな人に会うかって、大きいね。

石田 人生の岐路に立っていた時の出会いは大きいです!

服藤 進路形成には、ガチで地域の人との出会いは影響してるね。

石田 まちがいなく。

末本 みんなの後輩には、今宿、おもしろそうと思ってもらえたらいいです。学生時代だからできる経験のひとつのフィールドとして。遠くに行っても、みんなと今宿の縁がこれからも続くことを願っています。

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