「のどかな今宿に早く住みたい!」~上ノ原で温かい人々に出会った、ある九大生の感動~
文=服藤悠一郎
写真=末本圭子・横川千夏・朴相琥

九州大学共創学部1年 北垣玲音(きたがきあかね)さん
北海道岩見沢市出身、中学ではバスケットボール、高校ではダンスに熱中。
大学進学を機に福岡に移る。
“面白い教授に出会って、九大に来ました”
「よくわからない学部」と言われる共創学部ですが、共創学部生にとってもよくわからないようですね。北垣さんも「よくわからない」というのですが、
高校生のときに鬼丸教授のお話を聞いて、共創学部なら『何かできそう』って感じました。
迷ったときに先生に紹介して頂いた本や外部のイベントから、興味が広がり、少しずつ自分のやりたいことが具体的に見えてくる、それが共創学部の魅力だと語ってくれました。
北垣さんの場合は、劇作家・平田オリザさんの著書を教授に紹介されて読み、楽しい瞬間をつなぐ表現教育の世界に出会いました。表現をより楽しくする方法を見つけることに興味を持ち、世界の孤児院やスラムの子供たちとミュージカルや映画を作るNPO団体「LES WORLD」で活動しています。今はコロナで十分に活動できていませんが、海外でのワークショップを体験して、作り上げることの楽しさをさらに実感したいと願っているそうです。

“大人も子供もふらっと立ち寄りたくなる、そんな駄菓子屋さんを作っています”
九大の地域活性化サークル「iTOP」の中に、西区桑原地域(九大付近)でCafé、Bar、野菜販売のお店を運営しているプロジェクト「ゼロから伊都」があります。北垣さんも筆者もそのメンバーなのですが、北垣さんは先輩と駄菓子屋さんを始めようと計画しています。

駄菓子屋さんって、子供だけでなく大人もふらっと立ち寄りたくなるんですよ。だから、ママさんたちにくつろいでもらえるような駄菓子屋さんを作りたいんです!
子供が少ない地域ながら、単価の小さい駄菓子に大人向けの付加価値を加えて、「やりたい」を実現するビジネスを模索しています。
九大生、今宿と出会う

雪深い北海道出身の北垣さん。オンラインで取材したこの日も、家の周りの雪かきから一日が始まったそうですが、九州今宿の田園風景に一目ぼれしたようです。
町並みがかわいいな、って感じました。
きっかけは、去る2020年12月26日に、今宿プロジェクトの末本さんと横川さんが、今宿に来たことがない九大生向けに企画して下さった「今宿ツアー」です。北垣さんも、このとき初めて今宿を訪れました。
それでは、このツアーの様子についてみていきましょう。
はじめに訪問したのは、薦田さんのれんこん畑です。薦田さんの畑では、朝収穫したれんこんをすぐそばで販売されているのですが、我々が着いた時にはすでに完売。「今宿の朝は早いよ」と笑顔の薦田さん。そのまま収穫体験をさせていただきました。


ぬかるみだと思いきや意外に土が固く、薦田さんに教えて頂きながら、れんこんを傷つけないように、皆さん慎重に掘っていきます。

「れんこん、こんな風に生えてるんだ」と興味津々の北垣さん。ほかの大学生にも、それ以外の方々にも、ぜひ体験してほしいなと話してくれました。
次に末本さんに案内して頂いたのは、叶嶽神社です。
今宿の町が一望できる遙拝所は、紅葉の季節にまた来たくなる、景色のきれいな所でした。しゃもじの形をした絵馬には、どんな言われがあるのでしょうか。気になります。

その後、松田さんのご自宅にお邪魔しました。松田さんは、地元の素材を活かして様々な作品を作られている方で、住み心地と美しさを兼ね備えたご自宅は、松田さんこだわりの作品やコレクションが所狭しと並んでいました。玄関の置物をはじめ、障子の配色や甲冑など、ひとつひとつの要素についての理由や思い入れについて教えて頂きました。

北垣さんは、壁一面に飾られた沢山の振り子時計が印象に残ったようです。ご自身の生活に対する松田さんの愛情が、強く感じられました。

最後に、吉積ぶどう園を訪問しました。このぶどう園では7月末から8月にかけてのシーズン中、とれたてのぶどうと、自家製のぶどうソフトクリームを、畑のそばのお店で販売されています(公式HPより)。作られている様々な品種のぶどうについて、ご主人が楽しそうに教えてくださいました。ぶどうのシーズンにまた寄せて頂きたいですね。
シーズンオフの間、お店では野菜を販売されています。この日は、今宿特産のカツオ菜を使ったお雑煮を、一足早く振舞って頂きました。カツオのような美味しい出汁がとれるカツオ菜ですが、筆者が「スーパーで見かけないですね」と尋ねたところ、今宿でしか流通していないと奥さんに教えて頂きました。

さて、今回のツアーに参加して今宿がすっかり大好きになった北垣さんですが、この春休み中に今宿に引っ越そうとしています。新たに、上ノ原に学生シェアハウスが誕生するのです。空室があればすぐにでも!ということですが、オープンを前にして既に満室のようです。今宿上ノ原地域に学生が集まりつつあります。
筆者自身もツアーを通じて、学生を歓迎して下さる温かい今宿の人々に感動しました。こうした交流の機会を通じて今宿に興味を持ち、町を訪れる学生が増えて欲しいと願っております。